2019年12月2日月曜日

目次 明治維新で変わらなかった日本の核心 / 猪瀬直樹、磯田道史

明治維新で変わらなかった日本の核心(PHP新書) /  著者: 猪瀬直樹、磯田道史



はじめに ― 連綿と深層を流れてきた「核心」がいまも色濃く影響を及ぼしている / 猪瀬直樹


第一章 日本の組織原理と権威構造の源泉
古代をたずねる

江戸幕府は吉良家を切り捨てたかった?
江戸時代の「高家」はどのような存在だったのか
日本の国家システムの根幹としての「官司請負制」
平安時代の朝廷の地方統治システムと統治範囲
徴税も実質的には「請負」制度だった
平安時代の流通システムと貨幣のあり方
天皇の権威がなぜ、いかにして全国に行き渡ったか
日本神話を歴史として解釈してみると
仁徳天皇の時代には強力な海兵隊があった!?
「権力構造」は変わっても皇室の「権威構造」は変わらなかった
皇位継承の儀式に「違憲」だと口を挟む内閣法制局の愚


第二章 「新しい公」の再編成
― 鎌倉、室町、戦国のダイナミズム

鎌倉幕府と室町幕府は何がどのように違うのか
幕府が仲裁力を喪失し、戦国の世が始まった
中国の銭貨の使用で大陸ファクターが大きくなった
「守護」「地頭」の存在が意味すること
新興勢力の権威渇望を結集して生まれた後醍醐政権
幕府も暴力団も、直参の構成員は案外少ない
なぜ室町幕府はグダグダになっていったのか
「所領安堵」や「新恩給与」の地方分散化
「役」の徴収により凝集力の強い権力が生まれた
「宗教卓越国家」から「経済卓越国家」へ
なぜ「織田信長」が登場したのか
大名たちが「楽市楽座」を行なった動機
多様で効果的だった戦国時代の税徴収システム
安土城と近江商人気質と比叡山延暦寺
巨額の利益を生み出した秀吉の重商主義政策
権力の集中を支えた金山・銀山開発
日本の一五〇〇年から一七〇〇年は「偉大な二〇〇〇年」
「鉄砲」によって戦国の地方分権社会は中央集権化した
信長や秀吉は「天皇」の権威利用がうまかった
「御爪点」―天皇の身体由来の印が権威の裏づけ
戦国大名たちは官位を「いくら」で買えたのか?
武家の官位奏請を一元化して自らの権威を高めた幕府



第三章 江戸武家社会の組織と個人
ー サラリーマン根性の始まり

武士たちの知行は細かく「分散」していた
税率決定権も司法権も奪われて….
「滅私奉公」は江戸時代の武士階層のための言葉?
江戸時代の百姓は強い「家意識」をすでに持っていた
永代雇用のサラリーマンたる武士の人事評価
責任と権限は「上」、実質的な差配は「中」
武家の財政赤字の根本原因は「格式」
現在もなお生き続けている「官職二元制的原理」
長く座っていれば、何かおこぼれがある
実力主義で成り立っていた勘定奉行
優秀な人材を見つけるのも大切な仕事の一つ
武士たちは「気受け=巷の評判」を気にしていた
「情報ネットワーク」と「弟子システム」の不思議
融通無碍な「しなる江戸」の柔構造
「ペーパーテストによる平等主義」は正しいか?
「分の思想」の江戸社会のほうが現代より多様性があった



第四章 二六〇年の泰平を維持した社会システム
ー「転封」や「ジャンケン国家」の智恵

江戸の社会は「ジャンケン国家」
「転封」は二〇年から三〇年に一度の転勤
メンツは立てるが収入は減らす賞罰としての「転封」
新潟市と浜松市の職員を全員交換してみたら
参勤交代と「家康の誤算」
武士たちは何が楽しかったのか
武士階級の人口比率と構成比率
リスペクトの根源にある圧倒的な武威
語り継がれる「共通の物語」の重要性
日本全体の一体性を培う社会ネットワークのすごさ



第五章 江戸に花咲いた近代的経済
―  進んだ経済政策と百姓たちの企業家精神


農民たちの土地に対する強烈な所有者意識
藩としてまとめて農政を行なう
領民は天からの預かりもの
「農間稼ぎ」に税金はかからなかった
江戸の「外形標準課税」こそ日本経済再生のカギ
豪農の息子が一万石の大名よりも強い経済力を持っていた
産業振興策としての二宮金次郎ファンド
安定した貨幣制度の下、民衆の生活水準も向上
銭で回る経済がしっかり定着していた
一七〇〇年頃に日本は中国圏から完全に離脱した
商業・工業が優遇された銭本位社会
江戸幕府の銭貨ライセンス制度の大失敗
信用に基づく管理通貨制で金融政策も行なわれた
課税調整措置としての「徳政令」で経済活性化
商取引が安全に行なわれる社会環境の素晴らしさ
「江戸時代は貧農ばかりだった」は大間違い
村納税主義から家納税主義を経て、個人単位の税制に
田舎の人たちが東京都民にした仇討ち
五〇〇万両もの通貨発行益をもたらした荻原重秀
藩は生産性を上げるべく工夫を凝らした
日本には「四つの地域」があった
「宗教卓越国家」の残滓を消し去った寺請制度
文化革命に成功したのは天皇の権威を借りたから
日本の場合、階級闘争は「身分間」には存在しない
江戸には労働移動や職業選択の自由があった
二宮金次郎の経済哲学のおかげで日本は経済大国になった
官僚制の宿滴を打ち破る日本的方法
個々人が自分の「史観」を持たねばならない時代



対談後に付け加えるひと言 猪瀬直樹


おわりに――「通史的思考」をなさねば変化のなかを生きてゆけない磯田道史



装幀者 芦澤泰偉+児崎雅淑